「安定した会社に入る」
どんな業界を目指していても一度は求める”安定”
でももしやりたいことがあるのなら…
今回は、実現したいことのために安定を捨て、挑戦の道を進んだ子役出身の渡邉聖斗さんを取材!
大手事務所を辞めてやりたいことのために海外の大学に進学した聖斗さん。
一体なぜ、事務所を辞めてまで海外に行ったのか。
その裏には幼少期から叶えたい夢がありました。
渡邉 聖斗(わたなべ まさと)
役者。YouTuber。小学3年生の頃に芸能界デビュー。映画やCMのみならず、「天才てれびくんMAX」など教育番組にも出演経験がある。 演劇を学ぶために所属していた事務所を辞め、海外の大学に進学。4年間アメリカのカリフォルニア大学で演劇を学び、現在はフリーで役者をしながらYouTubeで文学史や英語に関しての発信をしている。Twitterはこちら。
目次
「1番難しいのは人間だよ」母の一言から芸能界へ
小学3年生で芸能界デビューしたそうですが、芸能界に入ったきっかけはなんだったんですか?
演劇を学びたいと思って芸能界に入りました。
その頃から演劇を学びたかったんですね!
なぜ演劇を?
元々は生物学者になりたいと思ってたんです。
それで母に「難しい生物を研究したい!」と言ったら「1番難しいのは人間だよ」って言われて(笑)
お母さん、鋭いですね(笑)
そこから演劇にどう繋がるんですか?
演劇というのは人間観察だとよく言われているんですよ。
だから生物学の一貫として演劇を学びたいと思って、その流れで芸能界に入りました。
でも、芸能活動していく中であることに気づいてしまったんです。
あること?
芸能界の人たちって売れたい!上手い芝居をしたい!って努力している人はたくさんいますが、演劇そのものに興味があって学びたいっていう人がほとんどいないんですよね…
芸能活動そのものが演劇の勉強になるわけではなかったんですね。
聖斗さんが芸能界入りしたのはなかなか珍しいきっかけでした。
子役というと、ご両親が主体で芸能界へというパターンが多いように感じますが、聖斗さんの場合はご本人の意思だったそうです。
しかし、学びたいと思っていた「演劇」は日本の芸能界で学ぶのは難しいということがわかってきます。
その後、ある出会いをきっかけに聖斗さんは挑戦の道を選ぶことに…
ある女優さんとの共演をきっかけに海外留学を決意
その後、アメリカの大学に進学されてますよね。
なぜ海外に行かれたんですか?
これは明確に理由がありますね。
きっかけは中学生の頃に出演させていただいた映画で共演したある女優さんとの出会いでした。
その方は海外で活躍されていた国際派女優と呼ばれるような方で…
その方に演劇に関して色々お話を聞いていただいたんですけど、「あなたがやりたいことは残念だけど日本では学習できないから、海外に行って学問として演劇を学んだ方がいいよ」と言われたんです。
なるほど… それが大きなきっかけとなったわけですね。
はい。 あとは、”起源”である場所が強いと思ったからです。
サッカーって今でもヨーロッパが強いですよね?
それは起源だからだと思うんですよ。
聖斗さんは大のサッカー好きらしい
演劇も同じだと思います。
演劇が形態化して、ビジネス化して…というように進んでるのはアメリカだったんです。
もっと歴史を遡るとヨーロッパだったんですけど、ヨーロッパが第一次世界大戦・第二次世界大戦の戦地になったため、優秀な芸術家はみんなアメリカに逃げたんですよね。
映画監督や舞台監督、小説家とか… そういったことがあってアメリカに芸術家が集中していたんです。
だから英語の会話力がどんな状態であろうとアメリカに行くしか選択肢がなかったんですよ。
たしかに最も進んでる国で学ぶのがいちばん大きな学びになりますよね。
あとよく「俳優って大学行くの?」って疑問を持たれることがあるんですけど…
なんとなくわかります。
大学には進学せずに芸能活動に専念されるイメージ…
でも僕にとって逆に大学に行かないことが疑問で…
俳優って役で弁護士にもなるし、政治家にも、歴史上の人物にもなるわけですよね?
それなのになぜ教養がなくていいんだろうって思うんです。
たしかに…
最速でどんな職業の人にでもなるということは、それが可能なくらい全体的な教養のベースが高くないといけないんですよね。
海外はそうなんです。
多くの俳優や女優は名門大学を卒業しています。
例えばマリリンモンローとかって東大よりも頭のいい大学を出てるんですよ。
僕はその方が正当だと思ったんです。
全く英語ができないところから海外の大学に進学するということはかなり勇気がいる選択。
しかし、日本では学びたいことを学べないという事実がある。
「英語がどんな状態だろうと海外に行く他選択肢がなかった」というほど、演劇を学びたいという熱意が不利な状況をも上回ったのだと思います。
ただ、これだけ熱意のある聖斗さんですが、全く不安がなかったわけではないそうです。
普通は事務所を辞めるべきじゃないんですよ(笑)
海外の大学に行くために、大手事務所をやめるって結構勇気がいると思うんですが、迷いや不安はなかったんですか?
それはありましたよ。
事務所辞めるべきじゃないです。笑
ええっ…?
やっぱり大きな事務所だから、そこを辞めて海外に行くなんてリスクのあることだし、今でも辞めない方がよかったかなという考えが頭をよぎることはあります。
今活躍している、北村匠海くんや横浜流星くんとかは僕の同期なんですけど、彼らに比べて僕は知名度がないですし…
この道に進んだのが直接的に俳優産業に貢献できるかどうかは今もなおわからないんです。
真斗さんでもそんな風に思うことがあるんですね…
ただ、どのみち辞めていたと思うんです。
ずっと変な感覚で仕事をしていたから。
変な感覚…というのは?
演劇って何千年も歴史があるのに、何も知らずにオーディションに受かって、役を演じて、お金をもらう… いいのかな?
どっかで僕は詐欺をやっているんじゃないかと…
この感覚で役者を職業として続けていくのは僕には無理だと思いました。
そういう意味で迷いは少なかったかなと思います。
なるほど…
しっかり演劇について勉強した上で役者として演じるということが真斗さんにとっては
正当であると… だから勉強せずに事務所にいたらどのみち続かなかったということですね。
聖斗さんが所属していたのはスターダストプロモーション。
普通ならしがみついてでも所属していたい事務所。
不安がないわけではないが、それよりも、自分の好奇心の向く方向へ進んでいった聖斗さん。
今いる場所に違和感を覚えたなら、思い切って新たな道に進むことを選んでみること。
それは逃げではなくて挑戦なのではないでしょうか。
Netflixとかって日本の作品少なくないですか?
日本で芸能の仕事をしているときは違和感があったということですが、海外の大学で演劇を学んでどうでしたか?
アメリカの演劇のどこを輸入して日本に持ってくるかということを考えるようになりましたね。
第二次世界大戦以降の名監督黒澤明監督や小津安二郎監督の時代は演技に対する細かい指導があったんですよ。
でも今はそういうものがなくなったと感じざるをえなくて…
感じざるを得ない…
なぜですか?
TSUTAYAや、Netflixとかみていると、日本の作品が少ないと感じませんか?
たしかに、最近は海外の作品が多い気がします。
観客も日本の映画やドラマが面白くないと感じ始めているからだと思うんですよ。
それは演劇に対する教育や設備投資の削減が如実に結果として出ているんです。
アメリカで演劇だけでなく、日本金融史なども学んだ結果気づいたことだそう。
システムとか経済的な問題なんだなと理解した上で、アメリカの演劇のどこを輸入して日本に持ってくるかということを考えました。
学んだことを知識として保存するのではなくて、それをどのように日本に持ってくるかということを考える…
どんな分野でも大事な考え方かもしれません。
安定を求めるなら絶対に離れなかったであろう大手事務所を辞め、自分の学びたいことのために海外の大学に進学した聖斗さん。
やりたいこと、好奇心の向かう先にとことん突き進むという聖斗さんを見て、挑戦することへの勇気が湧いてきました。
またとにかく知識、教養がある聖斗さんに驚きました。
途中から講義を受けているような気分になるぐらい…
知らなかった演劇の歴史に触れることができ、勉強になる取材でした。