スマホを開けば常に新しい情報や作品に触れ合えて、自分自身も作り出せる時代。
便利な時代になった反面、その一つ一つの価値が薄れてしまっているように感じることはありませんか?
今回はスマホネイティブ世代にもかかわらずフィルム写真家として活動している現役慶應生久保谷遥さんにインタビュー。
デジタルが主流のこの時代になぜフィルムカメラにこだわるのか。
その理由を聞いたところ、ものづくりに対する大切な考え方が眠っていました。
久保谷 遥
フィルム写真家。慶應義塾大学に通う現役大学生。ファッションポートレートを中心に、アーティスト写真やCDのジャケット写真、SNSでの広告写真の撮影、MV製作など、幅広い活動を行なっている。
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目次
写真を36枚しか撮れないって言われたらどうしますか?
久保谷さんはフィルムカメラの作品が多いですよね。
なぜデジタルではなくフィルムカメラなんですか?
フィルムカメラって設定とか複雑で難しいんですよね。
でもそれが逆にわたしは好きなんです。
あと撮れる枚数が極端に少ないところも魅力ですね。
もし1回の撮影で36枚しか撮れないって言われたらどうしますか?
そうなったら、失敗できないから準備ちゃんとしたり、一回一回めっちゃ考えて撮るかもしれないです…!
そうですよね!フィルムってまさしくそれなんです。
デジタルカメラとかスマホって何千枚も撮れるし、後で色味もいじれたりちょっと間違えても修正できると思うんですけど、それがフィルムカメラだとできないんです。
縛りが強いからこそ、写真と向き合う時間が増えるんですね!
そうです。
わたしはそっちの方が好きなんですよね。
1枚がすごく貴重なものになりますし。
フィルムカメラってその場で撮った写真の確認はできないですよね?
できないですね。
中古のカメラを使ってたこともあるんですけどたまに壊れたカメラとかもあって、頑張って撮ったけど現像してみたらほとんど何も写ってないこととかもありました。
それめっちゃ悔しいですね…
でもそういう苦労もしながら撮る1枚がすごく貴重なものになるんですね。
久保谷さんは写真展も結構やられていますよね。
それはSNSだけでなくて実際の写真を観てもらいたいからなんですか?
そうですね。
「生の写真」を見て欲しいので、2021年は展示に力を入れることを意識していました。
画面を通したものではなく?
はい。
逆にSNSにはそんなに重きを置いていなくて…
写真展の宣伝としてのツールであればいいかなと思ってます。
なるほど。
SNS上で活動したい訳ではないんですね。
そうですね。
1枚1枚集中して撮った写真を生でみてもらいたいって方が強いです。
それもフィルム写真家ならではな感じがしますね。
上手くいかないときでも自分の人格まで否定しない
フィルムカメラは難しくて何も撮れなかったこともあるとのことでしたが、嫌になってしまうことはないんですか?
それはないですね。
うまくいかないことで嫌になることはないんですよね。
むしろ逆境の方が好きだったりします。
自分より上手い人がいたからって私はダメだって思わなくて、もっと上手くなってやるみたいな反骨精神があると思います。
なるほど…
めちゃくちゃ伸びるタイプですね。
もちろん失敗は多いですけど落ち込むことはあまりなくて…
羨ましい…
ただ、反省はしますよ!
これができなかったからうまくいかなかったんだ…
じゃあ次はこれをできるようにしようとか。
そういうことは考えます。
次に向けての改善案をちゃんと考えるんですね。
はい。
でもそこで自分の人格は否定しないようにするんです。
これができなかったから私なんてもうダメだ…みたいな。
それわたしだ(by筆者)
人格を否定せずに事実ベースで反省するのって大事ですよね。
そう思います。
わたしができないことを当たり前にできる人もいれば、わたしが簡単にできることをできない人もいると思うんです。
だから何か一つできなかったからと言って自分自身の人格までを否定する必要はないんじゃないかと思います。
その通りですね。
それに若いうちから気づけているってすごいですね。
14歳ぐらいの時から思ってました(笑)
うん、早い。考えが大人すぎる久保谷さん
でもそう考えれば挑戦するハードルも下がるかもしれないですね。
そうですね。
失敗を怖いものって思わなくていいと思うので。
いろんなことに挑戦できるんじゃないかと思います。
自分の生きやすい環境を選ぶ
ここまでお話を聞いてると久保谷さんってカメラのこと以外でも自分のやりたいことにこだわっていてあまり周りの環境には左右されない印象があります。
ご自身ではどう思いますか?
そうですね。
よく友人にも言われるんですけど、自分が生きやすい環境を選ぶのが得意なのかなって思います。
生きやすい環境ですか?
はい。
嫌なことにすごく正直なんですよね。
いい意味でも悪い意味でも忍耐力がないんです。
合わない環境だったらすぐに変える感じですか?
そうです。
たとえばバイトで嫌な上司がいたり、嫌なお客さんがいたりしてそれが続くようならわたしは我慢せずにやめるタイプです。
最初は我慢するのが正しいのかなと思っていたんですが、毎日が楽しくなくなってしまって本末転倒に思えたんですよね。
実は筆者も1ヶ月でバイトを辞めたことがあります
耐えることの美学みたいなのが残ってますよね…
なんか、我慢してるうちは褒められると思うんですけど、限界を超えて潰れてしまったときに今まで我慢させてきた人たちが「ごめんね、我慢させてしまって」とはならないと思うんですよね。
たしかに…
じゃあなんのために我慢してきたの?ってなると、承認欲求だと思うんです。
その人に認められたいから我慢するみたいな…
そこに自分はないじゃんってわたしは思うので。
なるほど…
いい意味で自分を中心にした考え方ですよね。
あとは人格を否定しないってことと繋がるような気がします。
そうかもしれないですね。
その環境が自分には合わなかっただけで、自分自身をダメだって思わないです。
バイトで社会のことを学ぶのも大事ですが、そういう環境の変化をもとに”自分の生きやすい環境”って一体何なのかを考えて知ることがもっと大事なことなのかなって思いました。
ただ子供の頃は苦労しましたけどね(笑)
そうなんですか?
はい。
集団行動が苦手なので小学生の時なんかはすごく苦労しましたよ。
小学生特有の「一緒にトイレ行こう」みたいなノリあるじゃないですか?
なんで?って思ってました(笑)
たしかに小学生の頃はそういうこと多いですよね。
特に女子にとってはあるあるかも
みんな一緒じゃないと変みたいな風潮がすごく嫌で。
小学校を卒業する時は喜びしかなかったです(笑)
中学の時は同じように集団行動に悩まされたりはしなかったんですか?
中学の時は寮に入っていたんですけど…
寮ってめっちゃ集団行動なイメージがあります。
でも、寮のメンバーに「私は朝弱いから先にご飯食べてて」とか「部活終わった後にすぐにお風呂入りたいからみんなはみんなで入っていいよ」みたいに自分から言ってました。
中学生ぐらいになるとそれも周りが理解してくれて。
結構自由に過ごすようになりましたね。
なるほど。
小学生の時ほど変な目で見られることがなくなったんですね。
そうですね。
小学校の時よりマシだなって思ってました。
そこから高校に上がって、大学に上がって…
マシだなが積み重なって今はすごく自由でいい環境だと思ってます。
大人になるにつれて周りの人に自分の意思を伝えられて、自分は自分として生きやすくなってきたんですね。
時代もそういう時代になってきてますもんね。
はい。
だから周りがデジタルに拘っていてもわたしはフィルムを撮りたいって思うし、SNSで映える写真が流行っていてもそれに乗ろうと思わないんです。
自分の好きな写真を撮り続けたいと思います。
何千枚も撮れるとなるとまるで無制限のように感じてしまい、とりあえずたくさん撮ろうって思ってしまいすよね。
でもたったの36枚だったら…
1枚が貴重で、たくさん考えて集中していい写真を撮ってやるって気合いを入れられる。
大量に、流れるように消費される時代だからこそ、そんなフィルムカメラの良さにも気づけた気がします。
また今回久保谷さんのお話を聞いて、「自分の人格を否定しない」ことが大事だなと思いました。
久保谷さんは生きやすい環境を選べるのは無意識だとおっしゃっていましたが、それも人格を否定しないからできるのだと思います。
嫌だな、合わないなと思ったときに、その感情を抱く自分の人格を否定してしまうと耐えることを選んでしまいますよね。
でもそこで人格まで否定せず、「自分には合わないな。やめよう。」ぐらい軽く考えてもいいのかなと…
考えすぎてしまう性格の筆者はなんだか救われたインタビューとなりました。
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