「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり」
小学校の頃に習ったこの詩を覚えていますか?
諸行無常とは永遠に変わらないものはないという意味。
いつの時代も、世の中は移り変わっていくものです。
自分にとってプラスな変化もあればマイナスな変化もありますよね。
そんな世の中の変化に対してどうやって向き合っていくか…
今回は前回に引き続き写真家でコラムニストの古性のちさんにインタビュー。
”旅”を軸としてきた彼女が新型コロナウイルスの流行によって受けたダメージとそれを乗り越えて手にした新たなアイデンティティについて語っていただきました。
写真家。コラムニスト。 Twitterフォロワー数10万人。 これまで世界17カ国をまわるなど旅と仕事を両立させてきた。 現在はBRIGHTLOGG,INC取締役を務めている。 Twitterはこちら。
目次
日本をもっと身近に感じるためのツールが写真と文章だった
世界中を旅しながら仕事をされてきたわけですが、コロナの影響ってかなり大きかったですか?
そうですね。
コロナが流行り出したときは、タイにいたんです。
家も借りて長期で滞在していたんですけど、日本に帰ってこざるをえない状況になってしまったので…
世界に出ることを10代の頃からずっと夢みてきて、やっと実現したのに自分のアイデンティティを失ったと絶望しました。
そうですよね…
でも今は「写真と言葉」を発信をされていて、SNSでも人気を得ていますよね。
どのように絶望を乗り越えて今に至ったんでしょうか。
今までの生活ができなくなってどうしようかなと思った時にふと「日本のことをずっと好きになれなかったな」と思ったんですよね。
日本にいなきゃいけない状況だから、これを機に日本のことを好きになってみようって思って始めたのが「写真と言葉」だったんです。
そこで生まれたんですね。
なぜ「写真と言葉」だったんですか?
もともと綺麗な言葉は好きだったんです。
日本には綺麗な言葉や四季があって…
日本の中で唯一好きだと思えるものからアプローチしていこうと思ったからです。
なるほど…
好きじゃなかったはずの日本の中から好きだと思えるものを探された結果だったんですね。
それがSNSでも人気を得たと…
最初は誰かに見せたいという気持ちで発信していたわけではなかったんですけどね。
単純に日本を好きになるためのリハビリとしてやっていたんです。
自己満です(笑)
そうなんですか!
でもその自己満に共感して「日本って綺麗なんだ〜」と思ってくれる人がフォローしてくれて。
それで”旅の人”から”写真と言葉の人”にイメージが変わっていったと思います。
新しいアイデンティティを確立したんですね!
でも今日本にいるのはトランジットだと考えています(笑)
コロナが落ち着いたらまた世界を旅するつもりです。
※トランジット:目的の国に行く途中、給油などのために一時的に滞在する場所。
自分中心の働き方に変化が…好きな人たちと一緒に作る世界を…
現在はBRIGHTLOGGの取締役をされていますよね。
どんな会社なんですか?
「100年先も愛されるものをつくろう」をコンセプトにしているブランディングの会社です。
ものづくりのプロデュース、撮影や企画などをしています。
素敵なコンセプトですね。
それに共感して参画されたんですか?
いえ…
実はコンセプトには全然共感していなかったんです(笑)
日本のものづくりに根付いている会社なんですけど、わたしは日本のものより海外の雑貨の方が好きだし…笑
そんな…笑
ではどうして参画しようと思ったんですか?
ビジョンとかじゃなくて、”人”です。
人…?
BRIGHTLOGGはフリーランス時代から付き合いのある会社で、当時から会社のメンバーが大好きだったんですよ。
大好きなメンバーと一緒に働きたいという思いから参画されたということですか?
そうです。
今までは日本に全然いなくて部分的にしか一緒に仕事をすることができなかったけど、今はコロナのことがあって、日本にずっといるので。
もっとじっくり一緒に仕事ができる!と思いました。
これまでの仕事に対するモチベーションとか活動って真ん中には常に自分がいたんですよね。
それより外側に目を向けることができなかったんです。
もっと視野を広げたいと思ったし、自分のやりたいことをやるだけじゃなくて「好きな人たちと作る世界を見に行きたい」と思うようになったんです。
自分のためだけじゃなくて、人の力になりたいという思いが生まれたんですね。
もっとも感謝している人はスティーブ・ジョブズ。彼が世界を変えたから…
前回の記事では、集団生活や組織が小さい頃から苦手だとおっしゃっていましたが、再び組織に入ることに抵抗はなかったんですか?
なかったです。
時代が変わって、日本の企業の在り方も変わったので…
企業の在り方が変わった…
はい。 スティーブ・ジョブズのおかげで世界が変わって、日本の企業も変わらざるを得なくなったんですよね。
どうしてですか?
誰もが自分で発信することができる時代になったから、会社に依存する必要がなくなったからです。 優秀な人は自分でどんどん発信していって、フリーランスになったり、起業したり…
たしかに…
そしたら今までみたいに人を縛るみたいなスタイルが難しくなりますよね。
一人一人に合わせた働き方を推奨するような企業が日本にも増えてきたと思うんです。
それならわたしでもどこかに所属できると思ったんですよね。
実際にBRIGHTLOGGでも自由な働き方をされているんですか?
そうですね。
人数も少ないし、ルールがそんなに存在しないので…
心地良い働き方を重視してくれるんです。
出社する人もいればしない人もみたいな感じですか?
はい。
それでいうとわたしが一番出社してない(笑)
大体月に4回とか…
日本でこんな働き方ができるところが増えているんだ…
のちさんにとってプラスな時代の変化があって、その波にうまく乗れた結果、日本にいながらも自由な働き方ができているんですね。
新型コロナウイルスの流行で大きな打撃を受けたのちさん。
世の中が大きく変わってしまった中でも、自分らしく自由に生きるために見つけた「写真と言葉」は今では大人気コンテンツになっています。
窮地に立たされても抜け出す方法を模索すれば必ず光が見えるのだと思いました。
また誰もが自由に発信できる時代だからこそ、組織にいながらも自由に働ける…
視野を広げれば日本にだってそんな会社が増えてきていることに気がつけるのだと学びになりました。
どんな環境にいてもどんな時代がこようと自分らしく生きるために自分を見つめ、そして視野を広く持つことの大切さがわかったインタビューでした。